『リコリス・ピザ』を観た "NICENESS" -JACKSON-
昨晩、映画館で『リコリス・ピザ』を見た。
時は1970年代、日常に退屈するユダヤ系アメリカ人、25歳のアラナが、15歳ながら子役と経営に奔走する少年、ゲイリーにナンパされるところから始まるこの映画。
話のアウトラインや見どころなんかはFilmarksでも漁ってみてもらうことにして、ここでは素晴らしい映画だったことだけを書いておきますが、
なんと言っても1970年代アメリカのファッションが鮮やかに映されていたのが目について興奮した。
後半に出てくる市長候補のワックス氏なんて、公人のくせにふざけてるのかというくらい襟がでかい。ジャケットもシャツも襟がでかい。ついでにネクタイも太い。
別にふざけているわけでも、キャラ立ちを狙っているわけでもなく、当時のアメリカの基準がそこだっただけ。
マトモに見えるジャケットを着ていたのは、ショーン・ペン扮する大御所俳優のジャック・ホールデンくらいだった。
そんなわけで、我々が生きる現代では「襟がでかい」ことは多分にファッション的であり、
どちらかというと「華やかさ」を与える強いディティールである。
はい、襟、めちゃでかい。
でかい上に尖っている。
イメージソースには70年代ごろのミュージシャンの自由なジャケットの着こなしがあるらしいので、当たらずとも遠からずなのだろうが、いやはや、それにしてもでかい襟。
クラシックスーツの「ダブルのピークドラペル」とはかなり遠いところにある。
華やかかと言われるとどうだろうか。暗い色のコーデュロイはどこか田舎的な印象で、華やかなジャケットと形容するのはいささか適さない気がする。
フロントはなぜか比翼になっていて、少々野暮ったく思える生地とバランスの取れた品のあるツラ。
ラペル部分をボタンで留めてコート的に着る際にその良さが際立つ。
「ナイスネスのジャケットは良い」という評判が一人歩きしてもう2年近く経つだろうか。
相変わらず良いのは当たり前なんだが、今シーズンから出たこのダブル/ピークドラペルのジャケットはそう一筋縄では行かない、絶妙なバランスの1着に思える。
エグい仕様なのに、どこか野暮ったくて優しげ、品があるように見えるかどうかはもう着る人と合わせ方次第。
どう転んでも、買って、着て、後悔するようなジャケットでは決してない。
ゆったりしたシルエットは全て包み込んだ上で様になる。
ただ、70年代のアメリカが抱えていた様々なコンプレックスと、ソレらに対抗するように華やかになったファッションのことを考えて着てみると、このジャケットが急に雄弁に語り出すような、そんなエネルギーを感じるわけです。
何が言いたいかというと、油断してると、着たつもりが着られちゃいますぜ、このジャケットに。
リコリス・ピザの話がしたくて、明らかに時期的にまだ早いジャケットを紹介してしまいましたが、お客さんのとんでもないエネルギーのおかげで残りはこの1着だけです。
菊池健斗
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